恣意と必然の建築

恣意と必然の建築

大江宏の作品と思想

石井翔大/著

2,500円(+税10%)

ISBN:9784306047006

体裁:A5・282頁

刊行:2023年3月

建築家・大江宏(1913-1989)の作品と言説に、日本の近代建築受容の一端をみる。

丹下健三と大学の同級生であった大江は、近代建築が忌避した伝統様式や装飾の再評価を伴った「混在併存」の原理を標榜し、独自の設計活動を展開した人物として知られる。さらに、1960年代以降の多彩な作風は評価を難しいものとしたが、大江が作品と言説に一貫して込めていたものは、短絡的な捨象に依拠した一元論に対する批判精神であり、この姿勢は終生変わらなかった。
メディアを賑わす時流から一歩引いた眼差しを持ち、日本建築の正統をその身に引き受けようと試みながら、なお可能な限りの自由さをもって建築のあるべき姿を追求しつづけた姿を読み解く。

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  • はじめに
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  • 第一章 父の殻の恩恵と桎梏
  • 父と子と/原風景としての大正/ゲーリー・クーパーの手つきで/大学へ/惹かれた近代建築/セピア色のペンとデカダンス/日光再考/卒業論文「建築平面」/卒業設計「工作文化研究所」
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  • 第二章 戦時下の修練
  • 文部省宗教局への奉職/紀元二千六百年奉祝記念事業/神武天皇聖蹟の調査/実現した聖蹟顕彰碑の意匠/神武天皇聖蹟顕彰碑の設計過程/「國史館の造営」事業/「國史館」の屋根をめぐる論争/六つの「國史館」計画案/「國史館建築設計図案懸賞競技規程案」の内容/大江自筆「國史館」スケッチの分析/三菱地所への転職/三菱製鋼迎賓館/尾崎咢堂邸と大江宏自邸/中宮寺御厨子/二枚の写真
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  • 第三章 近代建築に対する執念と疑念
  • 法政大学へ/市ヶ谷キャンパスの歴史/キャンパス再建への課題/実現した「法政大学市ヶ谷キャンパス計画」/第一期:53年館−幾何学形態によるヴォリューム群と軸線の創出/第二期:55年館−バタフライによる軸線の強化/第三期:58年館−軸線の解体、多元的建築へ

  • 第四章 目にした世界、省みた日本
  • 学校建築の第一人者/第一回海外旅行/アメリカへ/フィリップ・ジョンソンとの出会い/ゲストハウスの衝撃/堀口捨己設計サンパウロ日本館の現場監理/伝統論争に対する大江の姿勢/ヨーロッパで実見した建築の多様性/梅若能楽学院/乃木神社社殿
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  • 第五章 〈混在併存〉の展開と限界
  • 疑念の果てに/「建築とカメラマン」/「“Casa de Mexico”−歴史的ビジョンについて」/香川県文化会館/第二回海外旅行/サン・サルバドール・デ・バルデディオス教会のスケッチ/〈混在併存〉の展開:一九六六−一九七三/乃木会館/マリアンハウス/普連土学園校舎/東京讃岐会館/茨城県公館・知事公舎/香川県立丸亀武道館
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  • 第六章 〈整合性〉から〈恣意的必然性〉へ
  • 〈混在併存〉からの脱却と〈整合性〉の追求:一九七三−一九八三/角館町伝承館/国立能楽堂/〈整合性〉の超越:一九八三−一九八九/宇佐神宮宝物館・参集殿/大濠公園能楽堂/高山屋台会館/大塚文庫/〈恣意的必然性〉
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  • あとがき