鹿島出版会と
言葉と
市川紘司
アルファベット そして アルゴリズム
本体 2,400円(+税10%)
建築史家はアカデミックな歴史研究に従事する一方で、しばしば同時代の建築家の実践を言葉によってサポートし、建築史上に位置づける役割を負ってきた。カルポによる本書は、そうした仕事の、近年におけるもっともインパクトのあったもののひとつだろう。本書によって、1990年代にはじまる建築の「デジタル・ターン」は、同一規格の大量生産に特徴づけられる近代からの転換であることを飛び越えて、デザイン(図面)と施工が分離したルネサンス建築の時代──すなわち「アルベルティ・パラダイム」からの、およそ500年ぶりの大変革と位置づけられた。歴史的な建築論と目新しいデジタル建築がみごとに接続された議論はスリリング。デジタル・アレルギーのある読者にこそ読まれたい。
(いちかわ・こうじ/建築史家、東北大学大学院工学研究科助教)