60周年特別企画「鹿島出版会と」

鹿島出版会と

歴史を読むと
陣内秀信

郊外住宅地の系譜

山口 廣/編

本体 3,800円(+税10%)

郊外住宅地の系譜

建築史の中でも住宅史は新しい研究領域だ。それも単体としての住宅でなく、都市の文脈の中で郊外住宅地の成立に光を当てる研究は先駆的だった。特に本書は、巨大近代都市・東京の都市史の掘り起こしの役割をも担い、近代住宅地の形成を社会的、文化的視点を入れて論ずる画期的な成果だった。舞台は旧江戸の市域、その周縁、そして郊外の新天地という様々なトポスをもつエリアである。刊行年はまさに、江戸東京ブーム真っ只中の1987年。執筆者は山口廣、藤森照信、内田青蔵はじめ錚々たるメンバーだ。70年代後半から積み重ねられた研究者たちの地道な文献とフイールドの調査がここに集大成され、建築の側からの東京研究の輝かしい金字塔となった。

(じんない・ひでのぶ/建築史家、法政大学名誉教授)

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