鹿島出版会と
土木と
内藤廣
都市計画家 石川栄耀
本体 4,800円(+税10%)
われわれは都市というものについて、変えようのない巨大な社会制度だと思いがちだ。行政機構の中で完結し、受け入れざるを得ないものとして思考停止している。しかし、都市計画という仕組みをつくり上げた石川の目指したものを知れば、都市とはそこに暮らす人々のためにある、という当たり前のことを感じ取ることができる。名古屋駅前、新宿駅西口広場、渋谷地下街、歌舞伎町、中野サンロード、関わったプロジェクトを数え上げればきりがない。生涯を通じて盛場の研究をし、今日の景観行政を半世紀も前に説き、晩年はコミュニティによる人の結びつきを実践の場で実行しようとした。専門外の人にこそ是非とも読んでもらいたい一書である。朝ドラで牧野富太郎に注目が集まりつつあるが、次の朝ドラの主人公は石川栄燿がいいのではないかとすら思えてくる。
(ないとう・ひろし/建築家・東京大学名誉教授)