鹿島出版会と
構造と
山田憲明
ピーター・ライス自伝
本体 3,800円(+税10%)
川口衞先生の著書『構造と感性』にあるように、構造デザインとは五体、五官を総動員して行う全人格的な作業である。無論、人格の大部分は幼い頃からの物理的・心理的な経験によって形成される。本書は、57歳という若さで生涯を閉じたARUPの構造エンジニア、ピーター・ライスが、どのようにして偉大な構造家になっていったかが俯瞰できる名著である。多感な幼少期を過ごした生い立ち、世界的なビッグプロジェクトにおけるドラマチックな葛藤、構造素材への深い洞察、構造エンジニアの役割と矜持がつぶさに語られる。迫りくる死と向き合いながら後世に自身の全てを残そうとした渾身の著作は、あらゆる読者に深い感動と示唆を与える。
(やまだ・のりあき/構造家)