60周年特別企画「鹿島出版会と」

鹿島出版会と

都市問題と
窪田亜矢

建築家なしの建築

バーナード・ルドフスキー/著、渡辺武信/訳

本体 2,000円(+税10%)



建築家なしの建築

『建築家なしの建築』に現れる非都市の風景から遠く離れて、私たちの身近な建築行為は、法制度・市場・工学技術の支配下にある。そして、建築物は単体で成立し、どこまでも増幅できるかのような幻想を社会にもたらした。このような「隣人という個」と「全体wholeness」の無視は、それらへの配慮を具現化する「共」の喪失につながった。むしろ「共」の喪失が近代の目標であった。個と全体の間にある緊張関係をどう保てるか、という模索の蓄積が、都市の風景であってほしい。しかし実際には、都市の風景を、都市問題の増幅装置にしてしまっている。都市問題への応答の手がかりとしての都市の風景が、本の中だけで良いはずがない。

(くぼた・あや/東北大学大学院工学系研究科都市・建築学専攻教授)

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