鹿島出版会と
事件と
五十嵐太郎
イメージゲーム (*SOLD OUT)
本体 3,400円(+税10%)
2022年末に亡くなった建築界の知の巨人、磯崎新の思想を知るには、鹿島出版会による函入り本のシリーズが必読書となるだろう。これは彼の設計手法、現代建築の批評、西洋や日本の建築論など、様々なトピックを含むが、今回、与えられたキーワード「事件」からは『イメージゲーム』を挙げたい。磯崎は展覧会、コンペの審査、会議などのイベントを通じても、事件を巻きおこした。本書は1970年代から80年代にかけて、彼が海外を飛びまわりながら、建築界を動かしたときの実況放送というべき内容をもつ。しかもポストモダンが勃興し、東京が盛り上がった時代と重なる。だが、いまや日本では、こうした時代の熱気が忘れ去られた。また内向きになっているからこそ、改めて異文化と遭遇しつつ、事件としての建築を発信した磯崎の姿勢を振り返りたい。
(いがらし・たろう/建築史・建築批評家、東北大学大学院工学研究科教授)