『OVERLAP』『EXPERIENCE』刊行記念
川添善行連続対談企画「本と本が語り合う」

川添善行 年始に『OVERLAP』、『EXPERIENCE』という黒と赤の本を2冊出版した後、編集担当者から「出版を記念して何か企画をやりませんか」というお話をいただきました。その時考えたのは、もし本と本が互いに喋ることができたらおもしろいのではないかなという妄想のような思いでした。そこで、本の代わりに筆者なり翻訳者が話す、それも1回だけではなく、立て続けに5回くらいできたら濃密な時間になるのではないかと考えました。

この連続対談は、「建築設計学第二」という私が担当する大学院の講義の一環にもしています。対談にあたっては、事前に学生たちと各回の書籍について議論を行いました。分野の異なる書籍だからこそ、その共通点や差異、そしてそこからどのように建築的な思考を展開するか、が大切になります。第1回から第4回までの司会は『EXPERIENCE』を一緒に翻訳した、印牧岳彦さん、小南弘季さん、倉田慧一さん、兵郷喬哉さんにお願いすることにしました。

私は本が好きです。そして、本にまつわる色々な文化を大切にしたいと思っています。本当は5回とも本屋さんの中でやりたいと思っていました。本のことを本屋さんで話す。最近は、そんな空間もほとんどなくなってしまいました。だからこそ、出版をゴールにするのではなく、本にまつわる色々な出来事を増やしたいと思ったのです。

この三年ほど、学生たちはオンラインでの体験が主となりました。だからこそこういう場が必要だったと思います。世代が違う、立場が違う、普段は会わない人と本音の話ができる。そういう場をつくることが、私の役割だったのかもしれません。その点においても、今回の連続対談をサポートしていただいた鹿島出版会には本当にお礼を言いたいと思います。

川添先生プロフィール画像
川添善行
(建築家・東京大学准教授)

  • 著者/監訳者:
    川添善行 Yoshiyuki Kawazoe
    建築家。東京大学生産技術研究所准教授。空間構想一級建築士事務所。1979年神奈川県生まれ。東京大学卒業、オランダ留学後、博士号取得。「東京大学総合図書館別館」「望洋楼」「四国村ミウゼアム」などの建築作品や、『空間にこめられた意思をたどる』(幻冬舎、2014)、『このまちに生きる』(彰国社、2013)などの著作がある。BCS賞、BELCA賞、ロヘリオ・サルモナ・南米建築賞名誉賞、東京建築賞最優秀賞、日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン未来づくりデザイン賞など。
  • 訳者:
    兵郷喬哉 Takaya Hyogo
    東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。東京理科大学非常勤講師。株式会社mast一級建築士事務所共同代表。1992年埼玉県生まれ。2015年東京理科大学工学部第一部建築学科卒業。RCR
    Arquitectes勤務を経て、2018年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社北川原温建築都市研究所、東京大学生産技術研究所特任研究員を経て、現職。
  • 印牧岳彦 Takahiko Kanemaki
    神奈川大学建築学部特別助教。1990年福井県生まれ。2014年東京大学工学部建築学科卒業。2021年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。東京大学大学院工学系研究科学術専門職員を経て、現職。博士(工学)。著書:『SSA』(鹿島出版会、2023)
  • 倉田慧一 Keiichi Kurata
    東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。京都芸術大学非常勤講師。1996年神奈川県生まれ。2019年日本大学理工学部卒業。2021年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。修士(工学)。
  • 小南弘季 Hiroki Kominami
    東京大学生産技術研究所助教。1991年兵庫県生まれ。2014年東京大学工学部建築学科卒業。日本学術振興会特別研究員(DC)を経て、2020年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了、現職。博士(工学)。